月影の祈り
 
 
―――ふと、懐かしいひとの声を聞いた気がした………
 
 
 まだ木の香りも新しい瀟洒な屋敷の一室で、一人静かに書物を読んでいたあかねは、文机から顔を上げると、ぐるりと辺りを見回した。
 
『………?』
 
 既にもう何の気配も感じられないことがわかると、あかねは小さく溜息をつき、御簾の合間から漏れる月の光の明るさに誘われるように、そっと部屋の外へ出る。
 そのまま濡れ縁まで足を運び、空を見上げると、金色の大きな月がかかっていた。
 秋の兆しを感じさせる穏やかな風が、微かな虫の鳴き声を乗せて、さらさらと朱鷺色の髪を靡かせてゆく。
 両の瞳に映る、くっきりと夜空を丸く象っている眩しいほどの輝きに、いつも同じものを重ね合わせてしまう自分に気付いたあかねは、思わず小さな笑みをこぼした。
 
「明るいと思ったら、今日は満月なんだ………」
 
 そう独りごちるとその場に腰を下ろし、ならば先程の気配もあながち気のせいでもないかもしれない、などと考えながら、高欄に軽く手をかけて、月光に照らされる庭に視線を落とす。
 美しく整えられた庭は造られて間もないためか、まだ少々趣に欠ける所はあったが、季節ごとの木々や花がそこここに植えられており、今はそれらが初秋の彩りを添えている。
 その内の一つである、この部屋に面した辺りに植えられた早咲きの桔梗の蕾が、淡い紫色に色づいてふくらみかけているのを見て、あかねはそれを感慨深げにじっと見つめた。
 
『もう、あれから二か月―――…』
 
 大切な人を守るために無我夢中で龍神を喚び、京に平安が戻ったのは、まだ日差しの厳しい夏の最中のことだった。―――あの日からの月日の流れの速さに思いを馳せ、その時の出来事をつらつらと回想していたあかねは、不意に、かつても今と同じように月を眺めていたことを思い出す。
 
 
 ―――突然見知らぬこの世界に召喚され、毎日が不安でたまらなかった頃…あかねはもとの世界と同じに見える京の月を見上げては、いつかきっと帰れると幾度も自分自身を励ましていた。
 あの頃の彼女にとって、月は故郷への思いを駆り立てるもの…見れば辛くなると分かっていても、見上げずにいられないものだった。それは、たとえほんの些細な共通点であっても、それがあるだけで、まだ自分ともとの世界が繋がっている、そう感じることが出来たから………。
 そして、その思いを支えに、彼女は日々を送っていたのだ。
 
 ―――けれど今は…。
 
 
 
「―――あかね?そこにいるのか?」
 
 後方から不意に落ち着いた声が響き、あかねはゆっくりと振り向いた。
 声の主は、微かな衣擦れの音と共に濡れ縁を早足でこちらへと渡ってくる。綺麗に束ねられた長い翠緑の髪を風に散らされながら近づいてくるその人は、彼女がずっと待ちかねていた人物だった。
「おかえりなさい、泰明さん」
「ずっと待っていたのか?」
 笑みを浮かべて嬉しそうに迎えるあかねに、泰明は少し驚いた顔をする。
「今日はあんまりお仕事遅くならない、って言ってたでしょう?…だから」
「そうか」
 軽く小首を傾げて見上げてくる彼女に泰明は軽く口元をほころばせ、その隣に静かに腰を下ろす。
 
「それはそうと、あかね、こんなところで何をしていたのだ?」
 ふと思いついたように尋ねると、あかねは一瞬きょとんとし、ややあって、ああ、と小さく声を発して答えた。
「月を見ていたの。ほら、すごく綺麗」
 ね?と言うとそのまま夜空を見上げたあかねにつられるように、泰明も中空にかかる月に視線を向ける。
「―――月?…ああ、今宵は望月なのだな」
 泰明の言葉に瞳を細めて頷くと、あかねは大きな翡翠の瞳をきらきらと輝かせながら、再び月の方へ顔を向けた。
 
「………何だか、不思議。私、満月の光がこんなに明るいなんて、ここに来るまで知らなかった。…むこうでは、月をゆっくり眺めた事なんて無かったから…」
 どことなく懐かしげに語るあかねの様子に、何故か泰明は微かな胸の痛みを覚える。
 
 
『………何だ?これは………』
 
 
 自らの反応を訝しみ、戸惑いながらもそれを面には現さず、彼は胸の内で自問する。だが己の中に生じたざわざわとした感覚が何なのかも、その原因もはっきりと掴めないまま、彼はただ隣に座る少女の横顔をじっと見つめた。
 
「京に来てからなの。こんな風に月を見るようになったのは…。こんなに綺麗なら、もっと前から見ておけばよかった」
 ほんの少し寂しげな表情を浮かべたあかねの様子に、心の奥底が少しずつ締め付けられるような苦しさが生じたのを、彼ははっきりと自覚する。その感情が、自分ではどうすることも出来ないままに次第に強くなってゆくのを感じながら、泰明は思い出したようにぽつりと呟いた。
 
 
「………月は、京もあちらも変わらない、と言っていたな………」
 
 
 だが、その押さえた声音に潜む僅かな変化に気付かず、あかねはうん、と頷き無邪気に微笑んだ。
「京に来たばかりの頃は、何もかもが向こうとは違ってすごく不安だったから。…向こうと同じに見える月を眺めていると、寂しいとも思ったけど、何となく安心できたの…。京と向こうとは、どこかで繋がってる、そう思えたから。
………そのせいかな、今も月を見ると嬉しいような、懐かしいような、不思議な感じがして………」
 
 満月の光に、夜空を見上げる少女の横顔が白くくっきりと照らし出される。
 
 何かを請う様にも見えるその姿に不意にかつて見た光景が重なり、締め付けられるような息苦しさと共に、思わず視線を逸らした泰明は―――その瞬間、唐突に自分の胸の内に生じた感情の意味と、その原因を理解した。
 
 
「………私は、月は嫌いだ。お前が月を見ていると不安になる…」
「泰明さん…?」
 
 
 殆ど無意識のうちに低く紡がれた彼の言葉に、驚いて振り返ったあかねは、苦しげに柳眉を顰めている泰明の様子に大きく目を見開いた。それきり黙り込んでしまった泰明に戸惑い、どうしようかと一瞬逡巡したが、ややあって躊躇いがちに彼の方へと手を伸ばす…。
 
 ―――柔らかな掌の温もりが、そっと頬に触れてくる。
 心にまで染み入ってくるような優しい温もりを逃がすまいとするかのように、泰明は反射的に彼女の手を捉え、しっかりとその掌を包み込んだ。
 あかねはそんな彼の琥珀の双眸を真っ直ぐに覗き込み、そこに不安とも苛立ちともつかぬ色を見つけると、ふっと顔を曇らせる。
 
「…どうして?どうして不安なの…?」
 
 強く、真摯な光を帯びた翡翠の瞳から逃れられず、泰明は彼女の瞳を見つめたまま、僅かに瞳を細めた。
 
「………見たからだ。月を眺めながら泣いていたお前を」
「………えっ…?」
 
 思わぬ答えにあかねは一瞬動揺し、やがて羞恥にその頬が赤く染まる。
 ―――確かに、月を見て泣いてしまったことがある。それは今もよく覚えている…。
 あれは四神の解放に動き始めたばかりの頃だっただろうか…。
 とにかく四方の札を集めることで頭が一杯だった時とは異なり、あの頃は、ちょうど少しずつ京や鬼のことが分かりはじめて、自分がこれからどうすべきか、分からなくなっていた時だった。
 そんな時に見た月に郷愁を誘われ、思わず弱気になって、「帰りたい」と一人泣いてしまったのだ。
 
 ―――だがまさか、それを見られていたとは…。
 
 そのせいで、今、彼を不安にさせているとしたら―――…そう考えると、恥ずかしいやら情けないやらで、あかねはだんだんと自分自身に腹が立ってくる。
 どう反応してよいのか分からずに、混乱して俯いてしまった彼女の手を、泰明はそっと解放する。
 そして彼女から視線を逸らすと、やがて心の奥底に秘めていたものを押し出すかのように、静かに言葉を吐き出した。
 
「………お前は、月を見ながら帰りたいと言って泣いていた…。―――その時、何故か胸が苦しくなって、見なければよかった、と思った…」
 自身の物思いにとらわれていたあかねは、泰明の零した言葉にはっと顔を上げたが、その真意を解しかね、翡翠の瞳を瞬かせる。
 
 
「泰明さん………?」
 
 
 その瞬間、突然、ざぁっ………と音を立てて風が吹き、二人の間を通り過ぎていった。
 庭の木々がざわざわと揺れ、千々に黒い枝葉の影を投げかける………。
 ―――その心の奥を示すかのように風に乱れる翠緑の髪に隠されて、あかねは泰明の表情を窺い知ることは出来なかった。
 
 
「その時は何故そのように感じたのかわからなかったが………今ならわかる。あの時、何故苦しかったのか。
 私は………あの時初めて、自分とお前の違いの意味を知ったのだ。―――その深い隔たりを。
 そしていつの間にか、お前と対等の存在になりたいと―――ずっと共に在りたいと望んでいたことも…」
 
「……………」
 
 どこか遠くを見つめるように、抑えた声で淡々と語る様子に、あかねは言葉を失い、ただ黙って彼の静かな横顔を見つめている。
 
「だが、現実はそう易しくはない。
 ―――この地で、師匠と神子の役に立つ為だけに産み出され、存在する私。
 神子としての務めを果たせば、もとの世界に、待つ者と帰るべき場所のあるお前…。
 お前は旅する者…。いつか、在るべき場所へ帰るのが定め。そう思っていた私は、たとえ心を得てお前と対等の存在になれたとしても、共に在ることなど出来はしないのだと………」
 泰明はそこで言葉を切ると、小さく息をつき………そこに浮かぶ感情を覆い隠すかのようにゆっくりと瞳を伏せる。
 
 
「―――私には、それが苦しかった………」
 
 
 月を眺めて一人泣く彼女の姿を見るまで、その苦しみに全く気付くことの出来なかった自分………それは、自分がひとの心を解せない創られたものだからだ。
 
 だが、たとえひととしての心を得たところで、自らの奇(くす)しき生まれが変わるはずもない。
 ―――そんな自分に、彼女と共に在る資格など…引き留める権利など、あろう筈もない………。
 
 
 ………今思えば、あの時から自分はずっと、心の何処かでそう思っていたのではなかったか?
 
「だから、だろうか。あかねが月を眺めていると、いなくなるのではないかと不安になる………」
「泰明さん………」
 
 彼の名を呼びながらも、あかねは何と言うべきか迷い、視線を宙に彷徨わせた。
 月光に照らされて、白くその端正な輪郭を浮かびあがらせた彼の姿はあまりにも儚げで―――まるで、彼の方が消えてしまいそうに思われ、ひどく彼女を不安にさせる。
 
 
 彼は今もまだ、心の何処かで恐れているのだ。
 自然の理から外れて生まれた自分が、人としての幸せを享受しうるのか、と。
 だからこそ、初めて自分をひとと認めてくれたあかねを失うことが、他の何より恐ろしい。
 
 
 『絶対に置いていったりしない』、『いつまでも一緒にいる』………そう言葉にするのは簡単だ。
 もしも口にした言葉が―――それに込めた彼女の思いが、告げた瞬間に現実になるというのなら、迷わずあかねはそう言ったことだろう。
 だが、それがどんなに強く思っていることでも、真実彼女が願っていることでも、それでは彼の不安をはらすことは出来ない。
 
 
 ………何故なら、彼らはもう知っているから。どんなに望んでも、どうしようもない現実があるということを。
 言葉や想いだけでは、ままならぬ事があるということを………。
 
 
 ………けれど。
 だからこそ、諦めてはいけない。
 今、自分に出来ることの全てをもって心を伝え、自分の望みを形にしたい。
 何が現実となり、何がそうはならないかなど、誰にもわかりはしないのだから………。
 
 
 あかねは正面から彼の顔を見ることが出来るよう、体勢を変えると、力無く投げだされている彼の手を取った。
 ―――自分が現在(いま)ここにいること、それを伝えようとするかのように。
 掌に戻った温かさに、ふっと顔を上げた泰明の瞳が、ゆっくりと彼女の姿を映す。
 どうか、彼に自分の気持ちが伝わりますように―――あかねは切に願いながら、ゆっくりと語りかける。
 
 
「―――私が月を見ていたのは、帰りたいからじゃないよ………。………祈ってたの………」
「…祈る?」
 困惑したように眉根を寄せて問い返す泰明に、あかねはこくりとあいづちを返し、うまく説明できるかどうか分からないけど…と呟きながら、そっと瞼を伏せて言葉を継いだ。
 
「あのね、今まで言ったこと無かったけど―――時々、ふっと感じるの。
 幸せな、暖かい気持ちを。こんな月の明るい晩は特に………。誰かが私に呼びかけているような…そんな感じなの。
 まるで月の光が、私に誰かの心を届けてくれているみたいに………。
 ―――ううん、本当に届けてくれているのかもしれない。
 だって月は、昼も夜も―――何時だって空から光を投げかけてくれているから。どんな所にも。
 ………私達には見えないだけで………」
 
 そう言うと、あかねは包み込むように握っていた彼の手に、自らの思いを込めるようにそっと頬を寄せる。
 そして、幼子の様に頼りなげな表情の中で、いまだ不安の影を宿す泰明の瞳に真摯な眼差しを向けた。
 
「………本当はね、どんな時も泰明さんと一緒にいたい。ずっと側にいて、自分の目で、泰明さんのことを見ていたい。声を聞いて、笑って、話をして………そうやって、一緒にいたいの。
 そのために私に出来ることがあったら、どんなことだってする。諦めたりなんかしない。
 ―――だけど、それでも一緒にいられない時があるかもしれない。私がどんなに想っても、泰明さんがどんなに想ってくれても、側にいられない時があるかもしれない………。
 そう思ったら、私もすごく不安だった。
 でも、これだけは忘れないで、信じてほしい。どんな時も、私が泰明さんを一番に想ってること………。
 ………だから。それをいつも泰明さんに感じてもらえたら、って前からずっと思ってた。そうすれば、不安も和らぐんじゃないかって。
 ―――そんな時、さっきの月のことに気がついたの…」
 
 あかねの双眸が光をはじいて、きらきらと光った。
 それが涙なのだと気がついて、泰明は思わず彼女の方へと顔を寄せる。
 ………するとあかねは、瞳を潤ませたまま、いとも愛らしく微笑んだ。
 
「もし私が感じたように、月が心を届けてくれるなら………ただ眺めるだけじゃなく、想いを込めて月に祈れば、光が降り注ぐのと同じように気持ちが伝わる気がしたの…。
 そうすれば、たとえ離れていても、いつだって心は側にいられる。繋がっていられる………。
 だから私、一緒にいられない時は、月に祈るから。私の気持ちが大切な人に届くように」
 
 夜空から降り注ぐ光の中で微笑みながら、あかねは真っ直ぐに泰明の瞳を見つめる。
 
 
 ―――あかねの言葉は、優しく微笑む彼女の笑顔と共に、彼を包み込み、その心に小さな光を灯した。
 ………やがてその光は、暖かな熱と切ないような甘い痛みとをもって彼の内を満たし、それまで不安に覆われていた心を、ゆっくりと柔らかく溶かしてゆく………。
 
 
 ―――不安なのは、自分だけでは無かったのだ………。
 泰明の胸の中に、ふとそんな言葉が浮かぶ。
 ―――だが彼女は、その不安さえも強さに変えていく。そして自分を前へと押し出してくれる………。
 
 
 月の光が射し込むように、泰明の琥珀の瞳を覆っていた影が晴れていく。
 
 
「………本当はね、月を見ていたのにはもう一つ、理由があるんだよ」
 そんな泰明の変化を見ていたあかねは、不意にそう言うと悪戯っぽく笑った。
 そして彼の注意を引くように軽くその袖を引き、輝く月を仰ぐように空を見上げる。
「ね、ほら見て!月の色って、泰明さんの目の色とよく似てるでしょ?光に透かした時の色と同じ、すごく綺麗な金色………」
 
 
………だから、月を見るのが好きになったの………
 
 
 振り返り、少し恥ずかしそうに頬を染めながら小さく囁かれた最後の言葉に、泰明は大きく瞳を見開いた。そのまま思わずまじまじと彼女を見つめる彼に、あかねはふわりと花のような笑みを返す。
 
「ああ………」
 吐息と共に、その端正な面に柔らかで甘い微笑みが広がる。それは、滅多に見られないほど鮮やかで綺麗な笑みで、あかねは思わず見とれてしまう。
 そんな彼女を泰明はそっと抱き寄せると、宝物のように自らの両腕で優しく包み込んだ。
「私はいつも、お前に与えてもらってばかりだな」
 耳元でそう囁くと、あかねは頬を赤らめながら、くすぐったそうにくすくすと笑う。
「そんなことないよ。………私も泰明さんからいっぱい色んな物をもらってるもの。誰かをこんなに好きになることを教えてくれたのは、泰明さんなんだよ?不安になったり、苦しかったりすることもあるけど、それでもこの気持ちがあれば、強くなれるし、頑張れる。………幸せな気持ちになれるの………」
 
 ―――そうなのだろうか。自分もまた、彼女に何かを与えることが出来たのだろうか………?
    だがそれでも、自分が多くを彼女から得たことに変わりはない。
    この暖かい気持ちを、どう言葉に表せばいいのだろう………。
 
「………ありがとう、あかね」
 泰明は腕の中のあかねの温もりを感じながら、瞳を閉じて、心の中でゆっくりと彼女の言葉を噛みしめる。
 
 
 あかねは自分が月に似ている、と言うが、自分にとっては彼女の方がよほど月に相応しい。
 何故ならあかねはいつも、その強く優しい心で、自分の心を照らしてくれるから………。
 今、自分の心に生まれた光は………あかねの心そのものだ。
 
 
 ――――創られた自分と、ひとであるあかね。
 
 それは泰明にとって、単なる事実でしかなかった。
 ………そう、あかねと出会い、彼女に惹かれていることを自覚するまでは。
 自分がひとではないという事実も、ひとになれるかもしれないことも、時折、ふと彼の胸に一抹の翳りをもたらすことはあっても、その事実に苦しみ、切実にひとになりたいと望むことなど、それまでは無かったのだ。
 
 確かに、あかねに出会わなければ、自分はひとになりたいと、あれほど苦しむことはなかっただろう。
 だが、そんな自分をひとだと言い、この心を与えてくれたのも―――自分をその暗闇から救ってくれたのも、紛れもなく彼女だ。
 そして今の泰明には、あかねと出会わず、心を得ないまま生きていく事など考えられない。
 
 ―――だから………。
 
 もしも月がひとの心を伝えるというのなら、月を見るたび私も彼女を想おう。
 彼女が自分に与えてくれた、この心の全てで。
 言葉だけでは伝えられない想いが、月の光となって彼女の心に伝わるように―――…。
 
 
―――――彼女を愛しているということ、いつも想っていること―――――
それが、自分の一番の真実―――ひとになった理由なのだから。
 
 
 
 
 
FIN
 
                                  2001.5.23(WED)UP.
                                       (to橘 桜様)
 
 
 
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