◇◆◇「雪・・・、わたしは雪のものだ・・・。そばに置いてくれ・・・だめだろうか?」◇◆◇










――― 微睡(まどろ) ―――









§








“ …――――― き、さ…”







朧な、闇の狭間を漂う意識に、微かに涼やかな声音が響く。







…それは、目醒めを誘う優しい旋律。



想い、温もり、慈愛…。
幾多の温かなものが(さざなみ)のように私を(おとな)い、
(うつろ)であった筈のこの(うち)へと流れ込んでくる。



緩やかに ――― そして密やかに。



それはまるで天より降り注ぐ陽射し、
空高く吹き抜ける風、
甘く薫る花、
深緑の森を鳴き渡る鳥、
宵闇を照らす明るい月…。



――――― 私を取り巻く全て。    



そうして私を包み込む温もりは、
胸の胎に固く凍りついていた心を潤し、
少しずつ花開いてゆくかのように、ゆっくりと綻ばせ…。



そして…。











―――――――― 光が、生まれる。











§











――― と。





…ふ、と。
柔らかな指先が、彼の額に触れた。



それは決して過つ筈の無い、愛おしい感触。

吐息の音すら聞こえそうなほどに近く感じられる気配に、泰明は仄かに微笑する。
開いた己の双眸が、最初に映す光景への暖かい予感に、胸を震わせながら。











この瞳を開けば…その先にお前がいるのだろう。











泡沫の(あわい)に漂う淡影でなく、
確かな温もりを湛えた現身(うつしみ)を纏う、そのひとが。

私が目醒める時を待ちながら ―――…。





そして、呼ぶのだ。
誰よりも優しく、甘く滲み入る水の流れの如きその聲で。




















“ …――――― 泰明さん…”




















『 ――――― 神子 』




















脳裏に柔らかに響いたその聲に応えるかのように。
泰明は己の胎でそっと囁く。

彼を捉えて離さぬ、深く輝く翠の瞳の持ち主を。

自身の心の向かう先 ――― 瞳を合わせたその刻に()のひとが浮かべるであろう、
花のような微笑みを、思い描いて。





白皙(はくせき)の頬に影を落とす睫毛が震え…。




















『 …―――――――― 今、お前に ――――――――… 』




















そして。
ゆっくりと、澄んだ色合いの瞳が開かれる ―――――…。
















【 FIN.】





2003.5.12(MON)UP.
【 +++ To 神奈さま +++ 】


< Written by Yuki Kugami. 2003. / Site 【 月晶華 】 >

< Illustration by Kanna. 2003. / Site 【 One-Sided Love 】 >





【 One-Sided Love 】神奈さまのサイトで1192HITを踏み踏みして、戴いたイラストですv
拝見した瞬間、


きゃ〜〜〜!!!(≧▽≦)


と悲鳴を上げてフリーズしました、私///

泰明さんが!!! もうもうすっっっごく綺麗で素敵ですよね〜〜〜(>_<)!!
とても澄んだ雰囲気の中にほんのり柔らかい色気があって、表情も何とも言えず甘くて。
何か、とても大切なものを想っているような微笑みのように感じられてメロメロでしたvv

さらに神奈さんが「泰明さんの甘い囁き」(笑)をつけて下さっていて、

上のような事を考えて萌え萌えだった私は、感激のあまり卒倒しかけました…(笑)

そんな処から思わず文が浮かんだんですけど、何だかイメージが独走してしまいました(汗)
私の頭の萌え具合がよおおおぉおく判るというものです(遠い目)
ちなみに「泰明さんの甘い囁き」を知りたい方は、イラストにカーソルを置いてみて下さいねv


神奈さん、素敵なイラストをありがとうございましたvv
お礼にならない文でごめんなさいっ(T-T)


by.陸深 雪









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